三菱ジープ30系

三菱ジープ30系

脱・作業車を狙ったジープ・ワゴン
ウイリス4×4ワゴンの流れを汲むCJ3B-J11の後継車が、このJ30系である。ジープが持つオフロード走破性に、居住性と荷役性をプラスすることを狙いとしたモデルで、初期型のカタログでは、多目的な「デリバリ・ワゴン」と謳われていた。
直線基調の他のジープとは違って、外観のデザインには、要所要所に曲線が使われ、また、ウイリス・ワゴンからの伝統であるボディー・サイドのバスケット・ウェーブと呼ばれるプレス・デザインも継承された。
作業車のイメージを拭い去り、他のジープたちとの差別化を図る努力は、内装の各所にも多く見られる。天井は、当時の高級乗用車によく見られた“吊り天井”が採用され、テールゲートを含む全てのドアと荷室には、内張りが施されている。インパネは鉄板むき出しではなく、ビニールレザーが張られ、ダッシュボード上には保護パッドを装備。スライド可能なフロント・ベンチシートと、シリーズ唯一の前向きリアシートにより、6名+荷物の運搬を可能とした。
また、よりパーソナル指向の強いBタイプでは、フロントのセパレート・シートにリクライニング機構が備わり、ジープとしては非常に画期的な仕様であった。
このように、脱・作業車がキーワードであったJ30系だが、実際の納入先は、建設業や官公庁が多く、メーカーがターゲットとした個人ユーザーの間には、なかなか定着しなかった。“ワゴン”を意識したと言っても、やはり、ジープであることに変わりはなかった、ということだろう。
長いリアのオーバー・ハングやホイールベースの長さにより、クロカン性能では他のジープに一歩譲るが、手の加え方によっては、そこそこの戦闘能力を発揮する。いっぽう、荷室にスペアタイヤが置かれるため、同じシャーシーを持つJ40系よりカーゴ・スペースは狭かった。